1本ぐらいなら…
「歯を失ったけど、
まだ噛めるからいいかな?」
いえいえよくありません。
大人の歯は、親知らずを除いて全部で28本あります。1本くらい歯がなくても食事ができないわけではありません。言葉を話すことも可能です。
しかし、歯の1本1本にはそれぞれに役割があります。歯のない部分を放置していると、かみ合わせる歯がない部分に移動したり、倒れこんでくる為、かみ合わせが崩れていってしまいます。
そのうちに、その歯の部分のみに限らず、周囲の歯や反対側の歯…そしてあごの関節に負担がかかり、周りの筋肉にも影響を及ぼすことがあります。
歯のないところに歯を入れることは、残った歯を守ることになるのです。
義歯(入れ歯)は、歯が抜けてしまった部分の機能や見た目を回復するために歯を入れる治療の1つです。すべての歯がない場合の「総入れ歯」と、部分的に歯がない場合の「部分入れ歯」があります。どちらも患者さん自身で取り外してご使用いただくものになります。
入れ歯治療の長所・短所
メリット
① 他の歯を削ることが比較的少ない。
(症例によっては、他の歯を削ってかぶせ物を作ることもある)
② 症例によるが、他の治療に比べて、早く歯を作ることができる。
③ 数本歯がない場合から、まったく自分の歯がない状態まで、すべてのケースに対応することができる。
④ 全身疾患の有無や年齢などに制限なく治療することが可能です。
⑤健康保険で治療することが可能。
⑥状態にもよるが、修理して使用することができる。
デメリット
① 床で粘膜が覆われるため、異物感があり、慣れるのに時間を要する。
② 発音がしにくい
③ 硬いものが噛みにくい。味覚や触感が鈍くなる。
④ 隙間に食べ物が詰まりやすい。取り外してお手入れする必要がある。
⑤ 完成し装着しても、数回調整が必要になる。
⑥ 設計によるが維持装置(バネなど)が目立ち、入れ歯とわかってしまう。
⑦ バネのかかる歯に負担がかかる
⑧ 長期にわたって使用すると、歯ぐきの変化など状態に合わせ、定期的に修理や作り変えが必要になる。
※短所を軽減させる設計や素材を選んだ入れ歯治療も可能です。
義歯(入れ歯)の短所を低減する金属床義歯
義歯の床にあたる部分が金属で出来ている義歯です。ほぼすべての症例(総入れ歯・部分入れ歯)に対応することが出来ます。(一部の金属アレルギーの方は注意が必要ですが、使用金属を変更することで対応が可能になることもあります。)
従来の保険の入れ歯の欠点を、軽減させるメリットがありますが、自由診療のため、費用がかかります。(入れ歯は残っている歯の状態等によって設計がことなり、費用もそれに準じて変わります。)
従来の保険の義歯を作り、さらに使用感など快適さを求める方に適しています。
保険の入れ歯と自費の入れ歯の比較
保険の入れ歯 | 自費の入れ歯(金属床義歯) | |
---|---|---|
素材 (床部分) |
歯科用プラスチック | 金属床 (コバルトクロムやチタン等) |
使用感 | 床部分が厚く違和感がある。 味覚や触感が鈍くなる。 発音しにくい。 |
床部分が薄く出来るため、違和感・異物感が少ない。 味覚や触感、温度も伝わりやすい。 薄く舌感もよく発音しやすい |
安定感 | 使用材料に制限があるため、噛んだ時の力の伝わり方で義歯がたわむことがある | 素材を選ぶことが出来、より変形しにくい安定性のある設計が可能 |
見た目 | 部分入れ歯でバネなどが目立つことがある | 入れ歯の設計が比較的自由にでき、見た目に目立ちにくく出来る可能性が高い |
強度 | 破損することがある | 床部分は金属なので破損しにくい |
修正 | 修理しやすい | 修理が難しいことがある |
費用 | 比較的安い | 比較的高い |
衛生面 | 汚れやにおいが付きやすい | 汚れやにおいが付きにくい |
※入れ歯は基本的に、入れ歯自体が悪くなっていなくても、ご自分のあごの骨は少しずつ変化していくため、保険の義歯・自費の義歯に限らず、定期的な修正や作り変えが必要となります。
また人工歯(かむ部分)は、個人差はありますが使っていくうちに、消耗していくため、定期的な調整や人工歯の交換が必要になります。